古沢地区の防災を古沢小学校で考えてみる
2018年3月11日
和歌山大学災害科学教育研究センター 客員教授
和歌山大学国際観光学研究センター 客員研究員
杉山幹夫
2017年から始まった、住民の皆さんとの学びの中で、廃校になった古沢小学校の利用法をLocalWikiによる知恵の共有をしながら考えることになりました。そして、学びの場を古沢小学校に移すことになります。役場の職員が4年間溜まりに溜まった図書室のホコリや虫の死骸を掃除して、小学校の掲示板や卒業生の作品、本、チョーク、黒板に囲まれながら、ラジオ体操をして、LocalWikiに活動をまとめて書き込みます。紙の地図、データの地図、自分でネットに描き込む地図が、地元の姿を私たちの心に焼き付けてくれます。
「掃除を始めるだけでもいいんだよね」と古沢の皆さんの口から。「つい、大事にしてしまって、大掛かりな仕掛けを考えてはできないと思ってしまっていた」と役場の職員が言います。じゃ、次に何に使おうか。「防災拠点としても使えないだろうか」「ホタルみたい」「星を観たい」そんなは話の中、和歌山大学の災害科学教育研究センターの所長が「一度、訓練のシュミレーションを学生とともにやってみましょう」と声をかけてくださる。役場の産業振興、情報、そして、防災セクションの職員が動いて、住民の中から当日参加できる方にお願いして、実際に、川や崖、地質、増水、情報、非常食、そして、自治力について学び、日常にできることを考えて行きました。
講義の最初に、役場の4階の会議室にあるジオラマを観て、古沢地区が変成岩でできていて、崩壊しやすい母岩であること、実際に、川床が高く、谷が浅く、なだらかな斜面が、農業にや生活に適しているとを知った。
このなだらかで広い谷は崩壊のしやすい岩石でできていることと暮らしやすさが隣り合わせだということも、丹生川に比べて不動谷川が濁りやすいことも学んだ。
さて、災害の発生時、復旧、復興の時にしたいこと、できなければならないことを、日常の暮らしの中で行うことはできるでしょうか。LocalWikiに書かれた、日常と災害を結んだ事例を見てみましょう。
以下は、伊豆大島や中越地震での調査や活動を通じて得た情報をまとめたもので、和歌山大学が主催した「防災・日本再生シンポジウム 災害時における情報流通 ~被災地の情報を如何に入手するか、如何に伝えるか~」での講演録です。
普段出来ていることは災害時にもできる (杉山幹夫,2017.12.11)
この講演録には以下のことが書かれています。
- 伊豆大島で高校生たちがLocalWikiを使って観光案内をしようとしたところ、背景の地図(OSM:オープンストリートマップ)に満足に道路も入っていないことがわかり、関東にお住いのマッパ(地図を描くのがこの上なく好きな人。誰もが簡単に利用出来るネット地図の制度を増すことで社会に貢献するものがあると信じている人)にお願いして、パーティを開いたこと。
- このマッピングパーティにより、一気に伊豆大島の地図(OSM)が他のどの地図よりも詳しくなったこと、そして、その結果大島を愛するマッパがたくさんになたこと。
- そのあと起きてしまった土砂災害のとき、一晩で被災状況が地図に描き込まれ、全国に飛んだ地図が、印刷されて大島に届けられて、復旧活動のしるべとなったり、大島の企業を取引先とする企業の支援や取引を促し、風評以外を消し去ったこと。
伊豆大島の地質と地滑りの関係を学び、古沢地区の地質と比べてみましょう
平成25年10月台風26号による 伊豆大島豪雨災害調査報告書 (2014年3月 土木学会・地盤工学会・日本応用地質学会・日本地すべり学会 平成 25 年 10 月台風 26 号による伊豆大島豪雨災害緊急調査団 )http://committees.jsce.or.jp/report/system/files/20140526.pdf
以下は報告書の中から、伊豆大島の地質が地滑りしやすい構造だったことをわかりやすく示している図を抜粋しています。また、植物の根が母岩に入りこんでいると、地滑りが起きにくい状態もわかります。九度山に住む人々から「杉の山は動きやすい。昔ながらの里山。雑木林が崩れた話しは聞いたことがない」とお話しがありました。地表の植生と母岩の構造の両方が地滑りの構造を作ることをすでにご存知のようすです。改めて、そういうことが、地区全体で、子供にも伝えられるようにしたいという認識が広がって行きました。
普段できていることは災害時にも出来るのであれば
じゃ、普段から九度山を知る活動を考えてみる。
九度山の地形と地質を知る活動を考える
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どうも、丹生川沿いと不動谷川沿いで風景が違う
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険しい谷の丹生川となだらかな谷の不動谷川
二つの地域の地質も比べてみよう
https://gbank.gsj.jp/geonavi/geonavi.php#14,34.26720,135.57539
産業総合研究所の地質図Naviはオープンデータなので、このように九度山をクローズアップしてみることが、簡単にできて、コピーして広めることができます。和歌山大学災害科学教育研究センターの長、此松教授は上の画像を示して、右側のグレーが硬い地層であり、川は川底だけ削り、周りが崩れにくいので、深いV字の峡谷ができることや、川面が谷の深い位置に存在すること、逆に空色の部分が、和わらかい泥岩室で、川が谷を深くしても周りの岩が崩れるので、川底は埋まって、川面の位置は相対的に高くなること、崩れやすいことで、斜面はなだらかになるので、農地として、生活の地として使いかってが良いことを指摘しました。
日常的に川を知ろう
川だけの地図がある
http://www.gridscapes.net/AllRiversAllLakesTopography/
川って何で曲がるの?
川をようくみるって
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見る
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観る
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診る
川を利用する
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川を見る
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川で遊ぶ
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川から水をとる
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川に水を流す
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川を資源にする
当日の参加者の発言から
- アユやアマゴ釣りのイベント
- 生物の観察イベント
- 川に近づけるイベント
- 河原で野外調理教室
- カヌーで川下り
- 川遊びができる可能性の追求→プロに川を見てもらう。
- 消防団の放水訓練を子供たちに見てもらう
- アユ・アマゴの放流を子供たちに見てもらう
- 学校教育と防災教育の連携
- 川を産業として
- 学習の場として
- 観光産業として
- アクティビティの場として
- 南海鉄道とタイアップした観光商品の提供
九度山の川を知る
不動谷川を知る
古沢小学校の周りで川を観る
地方自治と集落の自治を考える
この2018年の講義ノートの内容をもう一度古沢小学校で聞きたいという要望が、YAPPA古沢からあがりました。
2019年5月18日19:00より、古沢小学校体育間で、ブラッシュアップした内容の講義が、和山大学災害科学教育センターのセンター長、此松教授と客員教授の杉山により再演されました。