こちらで 名取せり鍋 を記述
名取の人にとっては、特別な料理でない。大量のセリを、根っこまでふくめて、お浸しや鍋にして食べるという。冬の名取で是非たべたい。仙台せり鍋という言い方があって、仙台名物となっている、セリは、名取りの余田(よでん)で作られている。
「閖上さいかい市場」の「浜や」さんの「名取せり鍋」は鶏肉と豆腐とセリのシンプルなもの。写真は、あまりに旨いのでセリを追加して山盛りになったところ。どんどん食べていたら「せり全部おわりです」って、食べ尽くしてしまった。お隣の仙台では鴨なども供されているようだ。
下余田の田圃のなかに、夏の稲の田圃を終えたあと、セリの田圃があらわれる。浮き舟を収穫に使っている。奇麗な地下水のある名取、余田ならではの冬作。虫もいない。農薬もいらない。奇麗な水とまじめな農家が居れば旨いセリがとれる。地元の人は「田圃だけやるより儲かるかもなあ。でも、津波で閖上の人が越して来るから、土地が売れるんで、高齢の人が離農するきっかけがまたふえたっちゃ」。セリの田圃を地元の人は芹田と呼んでいる。この芹田は全て良質の地下水を利用していると言われていて、その水脈が閖上迄届いているという人があった。その終着が閖上の佐々木酒造の仕込み水の井戸なのだと。
セリの漬け物も旨いという。「芹田によっては、根っこが苦いこともあるんですよね」という話をきく。
下余田の農家、加藤さんにお話をきいた。「上余田には、400年前に既にセリの栽培があったという記述が残っていますね」。名取川の伏流水を利用したセリ栽培は上余田に始まり、おなじ水脈を持つ下余田に広がったそうだ。地下水の温度は15度。意外と中に浸っていれば寒さを感じないのだとか。昔は、素足に藁をまいて入っていたのでさすがに寒かったようだ。小さな薪の風呂を畦に用意して、手足を温めながら作業していたらしい。「セリというと『競る』という言葉が語源らしいという話もあるようです。まあ、最初は小さいんですが、本当に競るように密集して背丈を伸ばしてゆきますね」。セリの上にかかるシートは、寒さで葉焼を起こすのを防ぐ、セリの防寒のためにかけてあるのだそうだ。
案内してくれたタクシーの運転手さんによると、上余田の芹田のほうが沢山あって、朝日を浴びながら、芹田から湯気がたっているところが凄くいいですよとのこと。いつか、そんな写真をどなたかが貼ってくださるかも。東北本線でも、仙台から名取に向かう途中、上余田の美しい、風情のある芹田の風景が一瞬車窓からみることができる。