6月。羽田空港から千歳空港に降り立つと、湿気は無いけど太陽にしっかり暖められた夏の空気だった。
「これこれ、この空気」
この季節の札幌は病みつきになる。9ヶ月の息子にも見せたくて(と言いつつ、単に自分が来たくて)、また来てしまった。
日中は、北海道の木材を使った家具のお店を回ったり、ジンギスカンを食べたり。
夜は、仕事でもお世話になっている札幌の友人(本当は先輩と言った方が正しいけど)とバーへ。
隣に居合わせた円山のレストランの支配人を紹介してくれた。皆、「ムッシュ」と呼んでいる。ムッシュに「遊びに来なよ」と誘っていただき、友人と一緒に翌日伺うことにした。
街の中心部、大通公園近くのホテルからタクシーで円山へ向かう。
10分も経たないのに目の前に丸々とした森が見えてきて驚いた。
植林された森ではなく、広葉樹と針葉樹が自然に混ざった森。
ムッシュのレストランはその森を前にして、森に手をかけるのではなく、森と一緒になるように造られたレストランだった。
明治の開拓でも、街に必要な森として、守られた森だという。
森を眺めていたらあっという間に時間が経ち、今度は森の中を歩きたくなり円山公園へ。
そこにはエゾハルゼミの声。新緑。鳥の囀り。ひんやりした空気。
シラカバやブナなど高原の樹が、高くのびのびと育っていた。
電車とバスを乗り継いで、そこから何時間も歩いて山の上に行かなくても、こんなに深い森が街の近くにあるなんて。
友人が息子を肩車してくれた。息子が友人の髪の毛をしっかり掴む。
高くなって、見える緑が広がり、樹が近くなったのかな。大はしゃぎだった。
6月の札幌は、ポプラの綿毛が飛んでいた。
ムッシュのお店と友人の家は一つ尾根を挟んでいるようで、ムッシュと友人は「うちは隣の谷でね」と自然を基準にして話していた。
札幌の住宅地を歩くと道が広い。ちょっと考えると、雪でも通れるためだと気づく。
春になると、森の雪が解けて豊平川を流れる。その水で野菜ができる。鮭も帰ってくるらしい。
札幌は自然と街が近い。
森が街を育て、森と街が子どもを育てている。
(2013年7月 森崎千雅)
【参考】
Facebookページ「子どもと札幌」のノートにも掲載しています。